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「さよなら」は言わない(ザクエア)








 振り向いたら、そこにクラウドがいた。
 戸惑ったように私を見ていた。
 何て声をかけていいか判らないみたい。
 私も判らないけれど、それでも精一杯の思いを託したいと思う。



もう、大丈夫、だね?








クラウドの声が届いた。
大丈夫、だって。










「・・・・・・・・・あれだけでよかったのか?」

まるで エアリスの心の声を聞いていたかのように、ふいにザックスが問いかけた。

「うん。・・・・・・・・大丈夫だって。一人じゃないって。」

エアリスが薄っすらと笑った。

「さっ!行こか!」

決して後ろを振り返るまいと決意でもしたように、エアリスが顔を上げて前を見詰めた。

「・・・・・・・・・・無理、すんなよ。」

ザックスの大きな手の平がエアリスの頭をぽんと叩く。

「まあ、あいつも漸く自分の居場所を見つけた、ってとこだな。・・・・・・・って、ホントは最初からあったんだけどさ。」

ザックスが少しだけ意地悪そうな顔をして笑った。

二人でゆっくりと歩き始める。

目の前がどんどん眩しくなる。











「『さよなら』は言わないって、決めたじゃない。」

そう言うと、ザックスが肩を竦めるようにして笑った。

















「さよなら」は言わない












「さよならザックス!!楽しかった。ありがと!」



エアリスが窓から身を乗り出すようにして大きく手を振った。
それに応えるように手を振り替えしながら、ザックスはほんの少し困ったように笑う。

 ホントは・・・・・・またね、とか、また来週ね、なんて言ってくれたら嬉しいんだけどな。


予定外の移動や出動が入るとしても、それでも必ず次の約束が出来る程度には二人の距離は近付いていた。
じゃあ今度は海行かない?それともツーリングでも行かない?
どんな提案にもエアリスは笑って「楽しみにしてる」と答えてくれるのに、それでも別れ際にはいつも「さよなら」と言われる。

何だかその言い方が、まるでこれが最後の別れになっても後で後悔しないようにと自分に言い聞かせているように聞こえて、ザックスはそれが少し不満だった。


 最後の別れかもって、いつもそうやって自分自身を納得させてんの?

 それはオレがソルジャーだから?

 オレがやられちゃっても諦められるように?



 ・・・・・・・・・そんなにあっさり訣別されちゃうってのも、何だかなあ。


確かに、何かトラブルがあって突然姿を現せなくなってしまう確立は自分のほうがずっと高いだろう、とザックスは思う。荒廃した時代だとはいえ、それでもミッドガルには神羅の規範は行き渡っていたし、少なくともモンスターが出現する事は殆どない。
ミッドガルにまでモンスターが現れるようになってしまっては、自分達ソルジャーが体を張っている意味がない。

 だから・・・・・・・・エアリスが住むこの町だけは安全でいて欲しいって。

 オレはいつも、戦いながらそう思ってるんだけど。

 もしこの星が平和で安全なところだったらさ

 オレは何か面白い仕事を見つけて、それでさ、エアリス・・・・・・・・・・・・・・・





























「さよなら」と言うと、いつもザックスが少し悲しそうな顔をする事にエアリスは早くから気が付いていた。
それでも会えば必ず、最後には別れの言葉を口にしないではいられない。
慌しく、何かに追われるように逃げ隠れ住んでいた両親の事を思う事もあれば、その両親との最後の記憶が曖昧な事も心のどこかに引っ掛かっていた。

養い親エルミナの大事な人が、最後の別れの言葉を自分を通してでも伝えたかった事も思い出す。




 ふいにどこかへ行っちゃうかもしれないのは、ザックス、あなたじゃなくって私かもしれない。

不安定な未来を想像すると体が冷たくなるような気がする。
自分の意志でどこかへ行くのならばまだ思いを伝える手立てもあるだろう。けれど、有無を言わさず連れ去られてしまう可能性も否定はできない。

そしてそれは、ザックスに伝えるにはあまりにも重い自分の運命だった。







 ・・・・・・・・・・私がいなくなっても、ザックスがあまり傷つかなければいいんだけど。

そう考えてエアリスは目を閉じた。










「サヨナラって言わなくてすむもっといい方法があるんだけど。」

ある日、遂に意を決したようにザックスが言った。

いつも通りに別れる時間がやって来て、いつも通りに別れの言葉を紡いで、そのまま歩こうとしていたエアリスは唐突な話題に驚いたように振り返った。

「あの・・・・・・・例えばさ。二人で出かけた後、一緒におんなじ場所に帰れるような未来とか、考えてみたことってない?」

ぎこちなく外れそうになる視線を必死で自分に留めようとするザックスにエアリスがぷっと吹き出した。

「・・・・・・・・・・何でそこで笑うかなあ。あの・・・・・・・・・・オレが言いたい事、ちゃんと伝わった?」



一世一代のプロポーズ、の前振り。

自分の気持ちをちゃんと伝えたいと、こんなに真剣に女の子に向き合った事もないというのに、そこから笑われてザックスの男心は秘かに傷ついた。

「ザックスが言いたい事?何だろ。おんなじ場所に帰れたら洗濯して貰えるかな、とかご飯作ってもらえるかな、とか?」

冗談めかして返事をして、そのままいつものようにザックスが軽いノリで話題を変えてくれればいい、とエアリスは思う。

「そうそう。おまけに遠征から持ち帰った汚れ物が山ほど溜まっててさ、一人じゃ洗い切れないから二人で風呂桶使って洗うとか。」

確かに軽いノリではあったけれど、ザックスはロックオンした照準を外そうとはしなかった。
秘かに傷つきながらも、ここまで来て引き下がるつもりはない。



「想像した事、ない?」



今度は視線を外さずにもう一度問い掛ける。



















 そんなに明るくて、騒々しくて、楽しい未来なんて考えた事、ない。











ふいにエアリスが黙り込んだ。









「・・・・・・・・・・・・いや、あのさ!」

黙ってしまったエアリスに慌てたようにザックスが言葉を継いだ。

しまった、まだ早かったか、と気持ちが焦る。

「あの、そんなに深く考え込んでくれなくてもいいんだけど。いいんだけどさ!!あの・・・・・・・とりあえず、なあエアリス・・・・・・・それでも、君が待ってくれている町に帰れると思うと、オレ、勇気が出るってかさ。何があっても絶対ミッドガルに戻って来よう、って思えるんだよね。だから・・・・・・・・・・いや、別にすぐ『お帰り』って言って貰えるようなふうにどうこうとか・・・・・・・いや、そんなんじゃないんだけどさ。まずは『またね』辺りから始めて頂きたい、って言うか・・・・・・・・・・」



体中が熱くなって口調がしどろもどろだった。



 何やってんだよ、オレ。

 深呼吸しろよ。こんなんじゃ何言いたいのか全然伝わんねえって!



「オマジナイみたいな物だって思ってくれない?ここへ、君のいる場所へちゃんと帰って来れるように。『サヨナラ』じゃなくって、『またね』って言って、くんない?そしたらオレ、何があっても帰ってくるから。だから・・・・・・・・・・」







さよならは言わないでくんない?













一気にそう言った後、まだ少し顔を赤くしたままザックスが、がはは、と照れたように笑った。

再び間があって、ザックスが生まれて初めて胃の痛みを経験し始めそううになった頃、漸くエアリスが口を開いた。







「ごめんね。」





予想外の反応に、これはひょっとすると「お断りの『ごめんなさい』」なのか、とザックスの背中が凍った。















 そうだよね。
 私、自分の事しか考えてなかったのかもしれない。

 自分の身の上に何があっても、最後の別れの後に二度とザックスに会えなくなってしまったとしても、ザックスが笑って私の事、忘れてくれればいいと思ってた。
どこかかから帰って来て、もし私がいなくなっていても、スラムの花売りがどこかへ行っちゃったな、くらいに考えて、早く次の幸せを見つけられればいいと思ってた。



 だからいつも心を込めて、精一杯さよならを言ってた。



 だけど、そんな事言ったらきっとザックスは怒るね。
 自分一人で納得して、オレの気持ちはどうなるんだ、って言うかもしれないね。

 ごめんね。







「・・・・・・・・・・ごめんなさい。」







「え・・・・・・・いやあの。別に怒ってんじゃないから。あの・・・・・・・・・それってダメって・・・・・・・・・・・あれ?エアリス?何で?何で泣いてんの?」

「・・・・・・・・・ごめんなさいザックス。」

ザックスが思い切り狼狽えている事は判ったけれど、何だか子供の頃に戻ったようにエアリスの涙は止まらなかった。





 いつも、いつかやって来る別れの時の事ばかり考えていてごめんなさい。





 いつかやって来る別れの時の事を考えていたとあなたに伝えられなくてごめんなさい。









「もう、言わない。『さよなら』なんて言わない。私も、あなたが帰って来るのをここで待つから。」















 どうして泣かれるのか、オレには皆目見当がつかなかった。
 だけど、彼女は彼女なりにオレの事心配してくれてるんだろ、と思った。
 それに、とりあえずダメじゃないよな?





ザックスは親指を一本上げてにっこりと笑った。

「じゃ、いい?今日から『さよなら』はナシにしてな!」

笑って言うと、エアリスがうんうんと、何回も頷いた。





















「じゃあ、またね。」

何だか泣き笑いのような表情でエアリスが、初めて「さよなら」以外の別れの言葉を口にした。

「おう!またな!!」

照れ臭くてザックスは大口を開けて笑った。

二人で大きく手を振り合った。



















    また、は永遠にやっては来なかったんだけどさ。












































オレ達は光の中を進んでいた。


ぽんと叩いたエアリスの髪の感触を確かに感じられたような気がして、オレの胸の中がちくりと痛んだ。



辺りは眩し過ぎて、隣にいる筈のエアリスがもうどこにも見えなかった。








                    愛する君にさよなら10のお題 creap(閉鎖) 真朝様より



























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