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コードα










宝条ラボ 実験コードα(アルファ)








「・・・・・・・・どうしてオレがその『小さい恋人達』を見守るような下らない仕事をしなきゃならないんですか。」

ツォンが忌々しげに呟いた。

「別に見守って貰う必要はない。彼らが生殖可能な体勢に入った時、スムーズに事が運ぶように画策しろ、と言っているんだ。君だったら彼らに年齢も近いから、サポートもし易いだろう?」

試験管を振っていた男が眉一つ上げずに、答えた。

「・・・・・・だったら、スラム辺りで暮らさせないでここに連れて来たらどうです。どうせ監視下に置かれているのだったら同じじゃないですか。そうすれば、年が近い者同士、自然に愛情が芽生えるかもしれない。」

自然に愛情が・・・・・・・・
そう言った時、ツォンの口の中に苦い物が広がった。

若く、美しい者達は他人が介入などしなくとも自然に惹かれ合うだろうと思うと、自分に与えられた役割が酷く滑稽な物に思われてくる。

「・・・・・・自然に任せておいて貰っては困るのだよ。何しろそれぞれが貴重なサンプルなのだからな。セフィロスは我が『ジェノバ・プロジェクト』が生み出した超古代種、そしてエアリスは古代種と現人類とのハーフだ。この二人から生まれるのは・・・・・・・どちらだと思う?二人の持つクズの部分の結晶か・・・・・・・それとも、ひょっとしたらひょっとして、『約束の地』へのキップを持つ、純潔の古代種が生まれるかもしれない。」

ひっ、ひっ、と嫌な笑い方をするこの男が実はセフィロスの実父らしい、という噂をツォンは耳にした事があった。

それならその子供は、あんたの孫になるんじゃないのか・・・・・・・

宝条の、親子の情愛からはかけ離れたセフィロスに対する態度は、親の顔を知らずに育ったツォンの目から見ても理解し難かった。

「モルモットもね・・・・・・・、子供の頃から一緒のケースに入れて飼って置くと、いつまでも兄妹のように単なる仲良しのままで居て・・・・・・・・・・・クックッ・・・・」

試験管の中身を陽にかざしてうっとりとしながら宝条が笑った。

「いつまでも交尾をしないんだ。彼らが・・・・・・そんなふうに育ったら大損害だからな。ここで共に暮らさせる訳にはいかない。」

それに・・・・と宝条は続けた。

「母胎になる方は、多少なりとも猥雑で丈夫な方が好ましい。どうせ半分は化け物のような女だ。場末で成長するのが相応しいさ。」

ジェノバ細胞が古代種の物ではなかったという実験結果は、宝条を更に狂った実験へと駆り立てるばかりだった。その結果誕生していたセフィロスは失敗作であり、それでもその失敗を有効利用して更なる成果へと結び付けようとする。

「セフィロスは・・・・・・・古代種だったのではないのですか?超古代種というのは一体・・・・・」

ジェノバ計画は半ばまで完成したと聞いている。そしてその計画から生み出されたセフィロスこそが『約束の地』への鍵を持つ人物だと、タークスの中ではまことしやかに語られていた。

「古代種以上の存在だ・・・・・あれは。」

目を反らせて宝条は言った。
計画の失敗と、セフィロスが古代種ではなかった事はトップシークレットだった。上層部が失敗作と判断し、自らもそれを認めながら、その彼を古代種を超える存在だと周囲に語る事は宝条なりの屈折した愛情だったのかもしれない。





「15歳の少年と10歳の少女のデートのお膳立て・・・・・・ね。」

データファイルを開きながら、ツォンは人差し指で有益な情報をトントンと叩いた。
セフィロスと名付けられた少年の、誕生から今日までの詳細なデータがそこには記されてあった。勿論、ツォンが閲覧可能な部分はその一部に過ぎなかったが、それでもそこから彼がどんなに卓越した人間であるかが伺えた。

こいつは本当に人間なのだろうか。
一読したツォンの感想は先ずそれだった。数値の一つ一つに寒気がする思いがした。

幼少期からの知能指数、身体能力、各種データの数値を見てツォンは軽く身震いをする。
彼が神羅の最年少ソルジャーとなってから今日までの戦績は言うまでもない。

「ただし・・・・・・・情緒面が今ひとつ、だろうな。」

あの綺麗なお人形のような少年が、誰かと楽しそうに語っている所も、どこかに連れ立って出かける所も見た事はなかった。
情、とつく言葉の何か一つすら経験した事のなさそうな冷たい瞳を思い出してツォンは嘆息した。

「愛情、同情、友情・・・・・・・・・ね。先ずは『お友達から始めて』貰うしかないだろう・・・・・。」







自分同様に、否、自分以上に不器用そうな心を持つ彼に接触する。
ツォンは、タークス最年少という自分自身の立場を呪った。









久し振りに見るエアリスは、近所の子供達と棒切れを振り回して遊んでいた。
まだ、手足も、その手に持つ棒同様に硬く細い。膝を泥まみれにして走り回っている少女を監視し、逃がさず、矯めず、年頃になたら当然のように生殖実験の待つ研究所へと引き渡す。

・・・・・・その時が来るまで無事に過ごさせる事が俺の仕事だ。

仕事だと割り切っても、相手が7才の時から監視を続けているツォンの身の内には、自然と人間としての情も湧いてくる。
宝条が何を企てているのかは分からないが、例え同じ実験であっても、相手に多少なりとも好意を持っていれば・・・・・・・それ程耐え難い物ではなくなるかもしれない。


「あれ?来てたの?」

エアリスはツォンの顔を認めて屈託なく笑った。

エアリスがあっさりと剣代わりの棒をその辺りに投げ捨てると、たった今までエアリスを囲んで剣を交えていた子供達が、一様にツォンを恨みがましい目で見る。

「お前は・・・・・・何の役だ。塔に幽閉されたお姫様か?」

お姫様を取り上げられたら話が進まないだろう、と、ツォンは笑う。

「違うよ。私は地球を救う英雄なんだ。」

得意満面の表情でエアリスが答えた。
子供らしいくせに、妙に自分の出生を暗示するようなエアリスの言葉に、ツォンの笑顔が強張った。

「まあいい。とりあえずお前の母親に挨拶をしよう。話はそれからだ。」

ツォンはその場に一度膝を着き、右肩の上にひょいとエアリスを乗せると立ち上がって歩き始めた。
後には、呆然とした小汚い子供達が残された。


エルミナに断りを入れてから、ツォンとエアリスは再び連れ立って歩き始めた。

「・・・・・今日は何の用?」

大人ぶった口調で話そうとする様子が伺えるが、気を抜くと直ぐに大股で歩くツォンに置いていかれそうになる。

「・・・・・ちょっと!待ってよ!ねえ、どこ行くの?」





「・・・・・・・・花を、作って貰いたいんだ・・・・・・・・・。」





「花!?ホント!?ホントに花?うわあどうやって?種があったの?」

エアリスの喜びようは普通ではなかった。
生花が一部の特権階級の物となって久しい。厳重に温度管理された室内で作られる人工的な花、それがこの世界に存在する唯一の花であり、露地に咲く花などはもう人々の記憶にすら残っていないのかもしれない。

エルミナも、この半ば軟禁されているような監視生活の中で、エアリスに花作りという楽しみを与えてくれるのならば・・・と、ツォンの今回の訪問を不承不承ながらも黙認してくれていた。

「苗を手に入れた。手入れがよければ・・・・・・増やせると思う。」

「でもどこで!?どうやって育てるの?」

そんな花だからこそ、増やす前に心無い人間に持ち去られてしまう恐れも十分にある。

「・・・・・・・伍番街の教会だ。それに、そこなら花を守ってくれる奴がいる。お前は何の心配もせずに花作りが出来るだろう。」


花を作って貰いたい、と言った時に、同じように目を輝かせた少年をツォンは思った。
自分が話しかけた時の身構えるような隙のない身のこなし、自分が語る言葉を申吟する思慮深い眼差しが、実は自分は花を育てているのだが、それを手伝って貰えないか・・・・と言った時に一変した。
正直、ツォン自身が戸惑う程に、セフィロスはツォンの意のままに教会へ通い、土を耕し、花作りに熱中していた。

「何でもいいから・・・・・・生きている物を育ててみたかったんだ。」

はにかんだようにそう言っていた。

どうして自分に声をかけたのか、という問いかけは、苗が大きくなるにつれ、セフィロスの瞳の中から消えていった。恐らく、作為を嗅ぎ取る事で大事な花を失いたくないのだろう、とツォンは思っていた。

「最年少ってのは、いろいろ大変だろ?だから、お前とは話が合うかもしれないと思ったんだ。」

用意しておいた嘘まみれの言い訳を口にする必要がなくなって、ツォンはほっとしていた。




片膝をついて、一心不乱に花の世話をしている人物の、綺麗な髪の色を見た時にエアリスが言った。

「私・・・・・あの人知ってる。神羅ビルで見たこと・・・・・ある。」

そう言って、教会の中を一歩、また一歩と進んで行った。




・・・二人がお互いを認識するまであと約二分、と言ったところだろう・・・


ツォンは、静かに教会の中から外へ出た。
腕時計に内臓されたインカムを引っ張り出し、暗証番号を打ち込む。




「コードα、始動。」




機械を通して、冷たい自分の声が一層冷たく聞こえればいい、とツォンは思った。







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